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新潟家庭裁判所 昭和33年(家イ)115号 審判 1958年10月03日

申立人 武井平吉(仮名)

相手方 高山次郎(仮名)

主文

一、相手方は申立人に対し本件解決のための贈与金として金二、〇〇〇円を交付すること。

二、相手方は上記金員を昭和三三年一〇月三一日までに新潟家庭裁判所(本庁)に寄託して、その支払をせよ。

三、申立人は以上のほか今後相手方に対し本件に関連する財産上の請求は一切せず、また当事者双方は他になんらの債権債務の残存しないことを確認すること。

理由

本件申立の要旨は、

相手方は申立人の亡妻トクの実家たるその母高山ハルのむこ養子として昭和六年一一月二八日高山家に入籍し、同時にハルの前戸主たるその長男亡高山太郎(トクの弟)の妻キクと婚姻し、同年一二月ハルの隠居により家督相続をしたものであるが、かつて太郎の死亡後にその相続財産が家屋敷にいたるまで全部他に名義が書き変えられ、申立人が奔走してこれが取戻に成功したことがあつた。そのさい上記キクは申立人に感謝しその礼として申立人生存中は不作のないかぎり毎年米一俵ずつを提供するを約定した。ところがキクは二回これを実行しただけで、ハルは昭和八年に、キクは昭和一一年にそれぞれ死亡した。申立人は現在老齢病弱であるから、現に高山家を承継している相手方に対し、上記約定履行の趣旨で金一五、〇〇〇円の贈与を得たい。

というのである。

これに対する相手方の意見は当家庭裁判所相川支部に嘱託調査の結果によれば、

「申立人が述べるような事情によつて財産の取戻に成功したことはそのとおりであつて、当時キクが感謝したであろうことは想像できる。しかし、謝礼のことについては、当時米二俵を贈与して解決ずみになつたと親族はいうし、自分もそう思つている。」

というのである。よつて調停委員会では申立人から直接その解決の希望を聴き、相手方に対しては前同相川支部に嘱託して意見の調整を図つた結果、相手方は今後申立人から一切の請求をしないことを条件として本件解決のため病気見舞金として金二、〇〇〇円を贈与することを承諾するというので、昭和三三年九月二七日の調停期日にこれを申立人に通じたところ、申立人は了承したが、相手方が遠隔の地にあつて同期日に出頭しないため調停が成立するにいたらない。よつて当裁判所は、当事者双方のため、衡平に考慮し、本件調停申立(昭和三三年五月一日)にさきだつ昭和三三年二月一一日当庁同年(家イ)第三二号贈与調停事件(申立人、相手方、申立の趣旨はいずれも本件と同一のもので、同年二月二五日取下により終了した。)の進行中、相手方の親族高山寛が相手方のために立て替えて金二、〇〇〇円を申立人に送付したことがあること、その他一切の事情を観て、当事者双方の申立の趣旨に反しない限度で事件解決を図ることとし、主文のとおり審判すべきものとする。

(家事審判官 野木三千雄)

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